tune1


この記事の内容は?
●劇団東京都鈴木区 第13回公演『Tune! ~ラジオな二人~』に、寺島拓篤さん、佐藤聡美さんらが出演
●演劇と朗読劇のハイブリッド舞台は斬新な演出が目を引いた
●ゲネプロ終了後の寺島さん、佐藤さんのインタビューコメントも掲載


 4月9日(土)、10日(日)に東京・座高円寺2で上演した『劇団東京都鈴木区』第13回公演『Tune! ~ラジオな二人~』。寺島拓篤さん、佐藤聡美さんらが出演するということで、取材でゲネプロ(本番前の通し稽古)にお邪魔してきました。普段はアフレコブースでマイクに向かって演技をする彼らが、舞台でどのような姿を見せてくれるのか、そんなことを期待しながら鑑賞してきたのですが……これがとてつもない面白さ! とにかく、その感動をできるだけ皆さんに伝えていきたいと思います!

tune4 tune2


 さて、この『Tune! ~ラジオな二人~』。大まかなあらすじは、とある町の片隅でひっそりと流れているコミュニティFM番組「ラジオでTune!(らじおでちゅ)」が、スポンサーの降板により存続の危機に陥ってしまうところから物語は始まります。運よく別のスポンサーの会社が現れたのですが、なんとその会社は寺島さん演じるDJソースケと過去に因縁があって……と、これだけでも引き込まれる内容です。一方、構成作家の卵としてFM局のスタジオを訪れていた佐藤さん演じるアカサは、突然そんな修羅場に放り込まれてあたふた。物語はソースケやアカサの過去をモノローグ調に紹介しつつも、一夜の不思議なできごとを経て大団円へと向かっていくのですが……。

 と、物語はとても魅力的で時間を忘れて引き込まれてしまう内容だったのですが、そんな舞台が始まる前、つまり幕が上がる前からじつは気になっていたことがあったのです。それが舞台の上手と下手の2箇所に設置されたスタンドマイク。もちろんコミュニティFM局が舞台ということでセットとしてマイクがあるのは当然ですが、そちらは別のマイクが舞台の中央にあるんですよ! ならば寺島さんや佐藤さんの朗読用のマイクなのかな……と想像していたのですが、なんとこのマイク、劇中ではさまざまな活躍を見せてくれことに!

tune3


 まずは予想通りに寺島さんや佐藤さんのモノローグマイクとして使用されるマイクでしたが、その存在自体は出演者には見えていない設定。ひとつ例を挙げると、マイクに向かって話すアカサの独白を見た他の出演者は「どうして壁に向かってしゃべっているんだ?」とか、「ひとり言が激しい子だね……」などと茶々を入れては我々にマイクの存在を無い物として印象付けていきます。それでいて劇の中盤では代わる代わる「無いはずのマイク」に向かって発言しては目立とうとする面々。こんなの笑っちゃうに決まっているじゃないですか! そんな見えないマイクを使ったユニークな演出を交えながら、演劇と朗読劇のハイブリッド作品は進んでいきます。

tune5 tune6

 もちろん寺島さんや、佐藤さんのモノローグシーン(朗読)や、演技も見どころ満載。普段のアフレコ姿に似たマイク前の演技はもちろん、大きなリアクションを伴った実演姿も見られるのだからお得と言わざるを得ません。以前もこちらで紹介しましたが、声優が出演する演劇は新しい発見がたくさんあってとにかく面白いんです。

 そんな『Tune! ~ラジオな二人~』は、ラストに向かってさまざまな伏線が回収されて、最後はパズルのピースが完璧にはまったかのような爽快感が得られた舞台。『劇団東京都鈴木区』の人気の高さを思い知らされる内容で、これからもアニメやイベントはもちろん、こういった舞台にもアンテナを張っていかないといけないなと改めて感じさせてくれました。舞台自体本当に楽しめましたし、皆さんも機会があればこういった舞台にも目を向けてみてはいかがですか?

 記事文末には出演者のインタビューもありますのでぜひ読んでください。また、こちらのイベントの模様は、5月10日発売の「ボイスアニメージュ」、「声優グランプリ」にも掲載されますので、雑誌をご購入された方はぜひ読んでみてください。ではこのへんで…ごほん!


ステイチューン!

ヾ(*≧∀≦)ノ゙


(どうしても言いたかった…)



tune7 tune8

tune9 tune10

tune11 tune12

tune13 tune14

tune15


 ゲネプロ終了後、寺島拓篤さんと佐藤聡美さんに取材をさせていただきました!お時間いただきましてありがとうございます!

――たった今ゲネプロが終了しましたが、今回の舞台はリーディングと演劇のハイブリッド作品。演じてみた感想は?

寺島 昨日も通し稽古をしているので「初めての経験! すごい!」といった感動はひと段落したのですが、それまでは僕も舞台をずっとやってきた人間なので朗読劇と演劇の融合ってどんな風になるんだろうという感覚はありましたね。いざ演じてみると、その融合はみごとで(主催の)鈴木さんの脚本だったり、演出の力を感じました。そしてやっぱり、人の顔を見て芝居をするのは気持ちいいですね。

佐藤 私も同じ感覚でした。顔と顔を見合わせて演技をしていくことによってよりリアルな演技になっていく快感がありました。あ、でも……最初は少しだけ「どこを見て演技をすればいいんだろう」なんて思っていましたけど(笑)。


――佐藤さんは舞台自体がほぼ初体験ということですが?

佐藤 私自身、舞台経験がほとんどなくて、勝手がわからない部分もあったのですが、団員の皆さんがフォローしてくださったり、「何があっても助けるから」といってくださっていたりしたので、大船に乗った気持ちで演じることができました。最初は未知数な部分に不安はあったのですが、今は本当に楽しくてこれからの本番4公演、どんな気持ちになれるんだろうとワクワクしています!


――舞台の上手と下手の2箇所にあったスタンドマイクは新鮮な演出でした。

寺島 舞台美術さんから図面が上がってきたときに「こんな風になるんだ!」と想像は膨らませていたんですが、実際に形になってくると存在感がすごいですね。演劇舞台は限られた空間の中でいかに世界を見せるかという点が大事。そんな現実空間に限りなく近いセットの“枠の外”にああやってマイクを設置することによって、場面場面で、シーンの演出をつけられたことは素直に関心しましたし、それでいてそのマイクを使って遊ぶ。こんな演出の仕方があるんだ、よく考えたなと。こうした演出が増えていくことによって舞台をやったことがない声優も、舞台に出やすくなるかもしれません。

佐藤 やっぱり最初に図面を見たときに面白いなと感じましたね。それに、会場に来た人は上演前から「何が起こるんだろう」とワクワクしてしまうんじゃないかなとも。そんなワクワク感は、劇が始まって朗読や遊びでそのマイクが使用されていくシーンを見て「ああ、こうやって使うのか!」みたいに、ピースがはまっていくような気持ちよさに変わっていくんじゃないかなって思います。あとは……私も声優なので、マイクの前に立つとやっぱり安心できるんです!(笑)

寺島 でも、最後の方は「台本が邪魔だな」って思わなかった?

佐藤 その感覚、ありました!

寺島 稽古を重ねていくうちに「台本を見ている場合じゃない!」みたいな気持ちになっていくんですよ(笑)。


――では、そんな稽古中での印象的なできごとは?

寺島 とにかく「鈴木区が面白い」ですね。

佐藤 本当にそれです!

寺島 僕は主催の鈴木智晴さんとは付き合いも長くて彼が役者オンリーだったころから知っているのですが、最近では脚本・演出としてもどんどん芽を出してきていると聞いていたんですよ。実際演じてみると、やっぱり演劇は主催に依る。劇団東京都鈴木区の空気感をひしひしと感じましたね。それは僕の大好きな鈴木さんの空気で、みんなの個性が爆発していて……。本当に稽古から楽しかったんです。

佐藤 じつは鈴木区さんとは以前『ヒーローアゴーゴー!』の舞台で声の出演だけお手伝いさせてもらったことがあったんです。そのときから「何か面白いことを一緒にやりましょう」と声をかけていただいていまして、今回こういう形で参加させてもらいました。大勢でひとつの舞台を作り上げていく経験は新鮮で、稽古を重ねるうちにどんどんはまっていって……稽古の最終日は寂しくて泣きそうになりました(笑)。


――ところで、もうひとり声優の客演がいると聞いたのですが?

寺島 あ、そうなんですよ。そこにいる山口清裕がそうです。

山口 僕、客演です!

――そうなんですね! 舞台では番組構成作家として、いろいろなコネクションで人をつなげていくブンタ役を演じていましたよね?

寺島 彼はフェザードという事務所に所属していまして、最近では『それいけ! アンパンマン』などに出演しています。

佐藤 山口さんが私たちと鈴木区さんをつないでくれた重要人物なんですよ!

山口 今回の劇と似たような役回りをしていました。

寺島 本当に人と人をつなぐ才能が溢れているヤツなんです! 

山口 よし、ちゃんと指示通り言えたね。もう、イヤモニを外していいぞ(笑)。

寺島&佐藤 あはは(笑)。


――では、これが初舞台となる佐藤さん、締めの一言をお願いします!

佐藤 私のファンには「舞台を観るの、初めてなんです」という人がいらっしゃったのですが、そんな観劇初心者の人たちに対しても自信を持って「この舞台は面白いです!」と宣言できる作品です。劇団東京都鈴木区さんや、今回の『Tune! ~ラジオな二人~』をきっかけに舞台の魅力に気がついてもらえたらうれしいですし、舞台を通じていろいろと発展していけばさらにうれしいなって思います!


【劇団東京都鈴木区】
http://suzuki-ku.jugem.jp/